
TĚLOPLAN VISITS: AWAZU HOUSE
神奈川の住宅地、緩やかな傾斜の上に建つAWAZU HOUSE ART CENTER。
1972年、京都駅ビルや梅田スカイビルなど、巨大建築の数々を生み出してきた建築家 原広司によって設計された。
グラフィックデザイナー 粟津潔の住居兼アトリエとして構想されたこの住宅は、完成された形式というより、思考の実験としての性格を強く持つ建築である。

エントランスは敷地の傾斜を活かし、高い位置に設けられ、内部へ入ると、階段を介して下方へと展開していく。
屋上からホール、そしてアトリエへ。
土地を平坦に切り崩してから建てるのではなく、地形に沿って構想されたこの建物は、人工物でありながら、どこか自然との連続性を感じさせる。

内部はひとつの大きな空間としてではなく、複数の小さな単位が連なることで構成されている。中央に配置されたホールを起点に、各室はわずかな段差や前室により 接続される。それぞれの部屋は独立しているが、完全には分断されていない。
全体としては、ひとつの「集落」のような構造を持つ。
ホールの天井は高く、上部はカーブを描いたガラスで覆われ、一面の空が広がる。
床から上に向かって立ち上がる照明は、まるで外灯のように空間に存在し、室内でありながら、中庭のような開放感を生み出している。
また、入口から一直線に敷かれたタイルを軸に、空間はシンメトリーを保っている。
さらに、この住宅に設えられた収納家具も、すべて 原広司 自身によって設計・制作されたものだという。空間と家具が切り離されることなく、ひとつの構造として統合されている点も印象的である。

この空間において、光は均質に広がらない。
開口部やトップライトによって切り取られ、断片的に内部へと差し込む。
光は壁や床に反射し、時間とともにその位置と質を変えていく。
それは単なる照明ではなく、空間を構成するひとつの素材として扱われている。
撮影は午前から夕方にかけての時間帯で行われたが、刻一刻と変わる表情が印象的であった。

この住宅は、後に手がけられる大規模建築へと連なる、思考の原型とも言われている。
AWAZU HOUSEは、単なる住宅ではない。制作の場であり、粟津潔を中心に、多様な分野の表現者が集い、交差する場でもあった。
私的な空間と公共的な空間の境界は曖昧に溶け合い、内部には都市のような関係性が生まれる。
閉じた箱ではなく、関係性を内包する装置としての住宅。
そこでは建築は、形としてではなく出来事として存在している。

かつてこの場所から見えていた景色は、より自然に近く、外部と連続する広がりを持っていたという。現在は住宅街の中にありながらも、その構造はなお、外との関係を内包し続けている。
ある一室には、この家とともに50年以上の時間を過ごしてきた陸亀が、静かに冬眠していた。
積み重なった時間と、そこに在り続ける存在。
変化と持続が同時に重なるこの空間は、固定された完成ではなく、更新され続ける状態そのものを受け入れている。
TELOPLANの衣服もまた、完成された形としてではなく、身体と時間の中で変化し続けるもの。
AWAZU HOUSEに流れる時間と構造は、その在り方と静かに呼応する。
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